その日、VHFウエザーでは、強風(ゲール)注意報は出ていませんでした。ちなみに、25ノットの風は、経験のあるセーラーにとっては強風ではありません。フォールスクリークの狭いチャンネルの中で、彼らの前方から漁船がやってきました。友人は航行ルールに従って、彼らとポートサイドを見合わせる位置をとったの ですが、漁船がフラフラと進路を変えはじめたのです。なにやら他のことに気を取られているような動きで、左右にバウを振りながら、まるで酔っ払いの千鳥足。何度 か、バウ同士が向かい合う形になり、危険を察した友人は、大きく船体をスターボード側に切って漁船を避けました。そのときに、漁船に追い詰められるように 岸に寄せられてしまったのです。そんな、非常識な漁船を回避したとたん、危険を避けるためにエンジンを無理に回転させてしまったことが原因なのか?、エンジンが突然止まってしまい、運悪く、風下だったことから、あっというまに岸に激突してしまったのです。それが、本来のいきさつでした。
けれど、その後が問題だったのです。
座礁した場所が、コーストガードの目と鼻の先ですから、すぐにもコーストガードはやってきました。ところが、駆けつけたところで、コーストガードのゾディアックが暗岸に挟まってしまって、彼らもスタックしてしまったのです。(725ホースパワーのゾディアックです。信じられません・・・)自分達も座礁して焦ったコーストガードは、次に「ビッグ・ガン」と彼 らが呼ぶホバークラフトを要請しました。それは40分かけてリッチモンドから走ってきました。大きなファンで海水を巻き上げながら、救出作業をしようとするが、彼らはなんと、投げるためのロープを海に落としてしまったり、海に飛び込んだ船員が溺れかけたりと、すったもんだするばかり。(信じられない・・・)その うち、潮がだんだんと引き始め、身動きがとれなくなってしまったのです。
ただ一つ、友人のミステイクを指摘するならば、出航前にメインセールのカバーを外していないことです。カナディアンのなかには、セールカバーをつけたまま海に出ている人が多くいます。(必ず、海に出るときは、いつでもセールを出せるようにしなければなりませんね。ちなみに友人は、ISPA受講者ではありません。(ISPAは新しい団体ですので) ISPAでは、ベンドオンの大切さを口酸っぱく言っていますね。) エンジンが止まった瞬間、友人はすぐにジブをあげましたが、不運にも、すでにセーリングできるスペースがありませんでした。狭いフォールスクリークの水路は、船の往来がもっとも多い場所です。気をつけましょう。
ということで、久しぶりにこの船の近況を見に行ってきました。あれから友人は、コツコツと船を自分で直していて、今では修理するのを楽しんでいます。驚いたことに、雨や雪避けのための小屋も全て自分で建てたのですよ。普通だったら、修理屋に出すか、新しい船に買い変えるでしょうね。ここまでできるセーラーは、なかなかいませんよ。なんでも自分で作ってしまうカナディアンらしいですね。尊敬です。友人として誇りですね。
ちなみに彼らのセーラードッグ、コッカースパニエルは、更に肥満になって、セーリングできる日を待っています。
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